暗闇の中、足音が何度も過ぎていきました。
今日は土曜日。
登山者がたくさんいるようです。
5:00起床。
何度か目が覚めたもののしっかりした睡眠でした。
雨はまだぱらついています。
この天気では食事も作れません。
こうなるとガスバーナーの方が便利かな、と思ってしまいます。
炎の力が一定でない。
燃料こぼれの心配。
閉所での目の痛み。
アルコールバーナーの残念なところです。
8:00。
少し雨足が弱くなりました。
まずは腹ごしらえです。
棒ラーメン豚骨味は安定のうまさ。
乾燥野菜とチャーシューも入れて大満足でした。
9:00。
太陽も少し顔をのぞかせてきました。
これ以上遅くなると戻りが夜になってしまいます。
荷物をデポ(一箇所においたままにすること)。
最低限の装備でいよいよ槍ヶ岳に向かいます。
雨具の上着だけ装備。
槍ヶ岳は本当に水が豊か。
至る所に流れがあります。
そのどれもが綺麗。
極端な坂もないし、印象とずいぶん違います。
歩くうちに雨が止みました。
せっかく着込んだのに何なん?
休日ということもあって登山客がたくさん。
これほど人の多い山登りは初めてな気がします。
たくさんの人と抜きつ抜かれつ。
全員が槍ヶ岳山頂を目指しているのでしょうか。
あたりはガスがかかっていて真っ白。
たくさんいたはずの登山客が見えなくなって孤独になります。
こちらは初登はん、開山をなしとげた念仏行者、
播隆(ばんりゅう)が利用したとされる洞窟。
50日以上もここですごして念仏を唱えたとか。
登山道具もない時代。高僧の苦労が忍ばれます。
ある程度傾斜はあるけれどそれほど危険箇所はありません。
土の地面から岩の地面に変わりゆっくりと頂上に近づきます。
遥か遠くに青空は見えます。
でも向かう槍ヶ岳は真っ白。
景色は期待できそうにありません。
槍ヶ岳直下の槍ヶ岳山荘に到着。
中を除いたらぎゅうぎゅうの人だかり。
すぐに外に出ることにしました。
本来なら山グッズを色々見たかったのですが……。
小屋のベンチに荷物を置いてさらに身軽に。
ヘルメットはすでに装備済み。
いよいよ槍ヶ岳にチャレンジです。
垂直に近いバラバラの岩場。
それに手をかけて登ります。
岩登りというほど難しくはない感じ。
目印に沿って動く。
手を伸ばして三点確保。
ゆっくりと上を目指します。
あたりは僕一人。
もしここで転げ落ちても誰も気づかない。
そんなことを考えながらも黙々と登ります。
ラストの鉄梯子。
ガスがかかっていて鉄の梯子は冷えています。
手袋、持ってくれば良かった……。
やっと山頂。
……て何も見えないやないかーい!
つっこんでみても一人。
あたり一面ガスだらけ。
高山の小鳥が呑気にエサ探しをしています。
この小さなお社だけが、槍ヶ岳山頂にいる証拠。
景色も何もあったものじゃない。
早々に山頂を後にしました。
降りる時の方が怖いかも。
疲れた足で踏ん張り、鎖や岩を伝って降ります。
岩の向こう側でよじ登る人を見かけました。
登り降りでルートが違うみたいです。
ここまでくればもう安心。
景色は見れなかった。
けれど登り切った満足感を感じます。
小屋で荷物を背負い、下山開始。
長い長い道のりです。
下側は雲が抜けています。
明日あたりはすっきりとした天気になりそう。
登りの時の人の列。
槍ヶ岳山荘の人だかり。
それらがまるで嘘のよう。
いつの間にか周りには誰もいません。
疲れで震える足に鞭を打ち必死で歩きます。
足裏の痛みはまだあるけれど歩けないほどではありません。
ひたすらひたすら長い山道を一人で降り続けます。
テントに荷物をほとんど置いてきました。
おかげで肩の痛みはありません。
とはいえ相変わらず続く坂道。
泣き言を言ってもテントには戻れない。
とにかく無心で足を動かし続けます。
足元にはハートマークの石。
靴と一緒に撮影。
辛さも含めて、楽しもう。
そう思って再び歩み始めます。
河川の方を見やると巨岩がありました。
ざっとみても自家用車より大きい。
自然の迫力を垣間見た気がしました。
後日、槍ヶ岳付近で震度4の地震がありました。
こうした大きな岩がいくつもある道。
危険はそこかしこに転がっています。
到着は17:40。
山では目的地に15:00まで到着すべし。
その鉄則が守れませんでした(来た時も守れてない)。
靴紐をゆるめ、マットの上に寝転がる。
それだけで体がじんわりと暖かくなる。
飲み食いよりもまずは休憩。
食事の準備も面倒。
お湯を沸かして軽くご飯を食べます。
野菜とコンソメでスープを啜り体を温めました。
あとはもう明日。
とにかく早めに寝て疲れを癒すことにします。
移動距離 12.32km
消費カロリー 2609kcal
移動時間 8:13:44