読んだ本まとめ2 『MMT入門』のにゅうもん2

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自国通貨を持つ政府は財政赤字を増やしても債務不履行にならない。

MMTにある有名な考え方。

夢のような話です。
国債やおかねをどんなにたくさん作っても構わない。

たくさんおかねを作って政府の借金をなくす。
国民にどんどん配りまくってもいい。
国も国民もどんどん強くなる一方です。
でも、そんな上手い話があるのでしょうか。

現に、その説を否定するような事件が過去にありました。

1997年のアジア通貨危機時の話。
もう一つは江戸時代の貨幣改鋳時の話です。

アジア通貨危機

1997年。
お隣の韓国は債務不履行寸前まで追い詰められました。

韓国は自国通貨のウォンを持っています。
困ったら自分の国でウォンを刷れば問題なし。
MMTによれば自国通貨を持つ政府は財政赤字を増やしても債務不履行にならない
なのにそれができなかったのです。

結果、IMFという厳しい組織に頼ってしまい、しばらく苦しむことに……。
債務不履行にならない、なんてやっぱり嘘。

しかしここでMMTから、反対意見があります。

ただし、自国通貨は"ハードカレンシー"である必要がある。

ということです。
ハードカレンシーとは何でしょう?

・他国通貨と交換可能
・流通量が十分
・発行国の政治経済が安定的で信用力がある
・国際的な銀行で換金が可能

という条件が含まれています
(正直、ここは後出しじゃんけんみたいな感じもするけど……)。

現在のハードカレンシーは米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、スイスフランなど。
一方で、ウォンは残念ながら流通量が少なかったのです。
ハードカレンシーと違ってまだ信頼が足りなかったウォン。
誰も受け取らなければ紙切れと同じになってしまいます。
その結果、韓国はIMFに頼り厳しい制限を受けることになりました。

逆にいえばハードカレンシーの一つ、日本円。
日本円だったらやっぱりいくらでも印刷可能だ!

日本円はハードカレンシー。
この一言でアジア通貨危機と同様の問題は起きない。
とりあえず、その問題は解決したとします。

でも、もう一つの問題もあります。
それが江戸時代の貨幣改鋳です。

江戸時代の貨幣改鋳

日本にだっておかねを増やして困った歴史があります。

江戸時代、五代将軍綱吉の頃。
豪華な生活を送り、寺社や湯島聖堂などを建立。
それに明暦の大火や風水害。
結果、幕府は大赤字。
さて困ったぞ。
このとき、一人の天才が現れます。
荻原重秀。

彼は当時使われていた小判を集めました。
それに安い金属を混ぜて新しい小判を作り直したのです。
小判の中に入っている金の量が減少。
でも、その分多くの小判を作ることに成功しました。
幕府内におかねがたくさん増えました。
一躍ヒーローです。

ところがその後で困ったことが起きた。
インフレーションが起きたのです。
その後、その混乱はしばらく続いてしまいました。

幕府の財政赤字が増えた結果、極度のインフレ。
ものすごい混乱が起きました。
これはもはや江戸幕府の債務不履行に近いのではないでしょうか。

自国通貨を持つ政府(=江戸幕府)
財政赤字(=豪華な生活、寺社や湯島聖堂の建立、火災や水害の補修)を増やして
債務不履行(に近いインフレ)になっている。

小判は確かに増やせます。
金(ゴールド)の割合をどんどん減らせばいいだけです。
金の割合を80パーセント、50パーセント、20パーセント……。
どんどん減らしていけば小判はいくらでも増やすことができます。

でもそれがやがて0パーセントになったらどうでしょう。
金(ゴールド)の含まれていない小判。
何だこれは?
その次は銀、あるいは鉄とか銅。
色々な金属の小判ができるかもしれません。
でも、そうなった時の幕府が作る貨幣を誰が使いたがるでしょうか。

金(ゴールド)という価値の高いものがあるからこその小判。
その価値がない小判なんてもう交換したくなるはずがありません。
そのとき、江戸幕府は債務不履行となるのです。

あれ?
やっぱりMMTって嘘じゃん。
この点に関してのMMTからの答えは見つかりませんでした。
しかもせっかく1.とか2.で分けたのに、2.だけやたら長くなっちゃいました……。
なんてこった。

小判とお札の違いからの新しい問題

やっぱり、MMTの”自国通貨うんたら”は嘘。
江戸幕府は”両”をいくらでも発行できる政府機関。
それでもインフレが起きてしまったじゃないか。

でも、これに関しては僕でもわかる違いがあります。
それは小判は金(ゴールド)でできている、ということです。
江戸時代は金本位制だったのです。

金本位制とは

各国の中央銀行が発行した紙幣と同額の金を保有し、いつでも相互に交換することを保証する

野村証券 証券用語解説集

いつでも金と交換できる紙幣、というより金そのもの。
それで作った貨幣である小判。
その小判は金(ゴールド)がある限り増やせる。
でもその金(ゴールド)がなくなったら増やせない。
小判の限界がそこにあります。

でも現代の貨幣は金本位制ではありません
金(ゴールド)の限りがありません。
だからいくらおかねを作っても問題ないのです。

ハードカレンシーである。
金(ゴールド)という限界がない。
だから今の日本は最強。
安心して貨幣をたくさん刷れるのです。

……でもここに新しい問題が発生します。

日本のおかねって限界がないの?
金本位制じゃないおかねは無限に作ることができるの?

その点に関しては、次回にまとめたいと思います。

*今回の参考テキスト


MMT現代貨幣理論入門 Kindle版