『政治と情念』〜穴掘りゲームで国が豊かに〜

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前回は田中角栄元総理と岸田文雄現総理を比べさせていだたきました。

田中角栄総理大臣は金儲けで私服を肥した悪い総理大臣。
岸田文雄総理大臣は増税で国民を苦しめる悪い総理大臣。
そんな結論で終わってしまいました。
理想的な総理大臣っていつの世でも存在しないものですね。

今回はその金の亡者、田中角栄元総理。
どんな様子であったのかまとめたいと思います。

Wikipediaより

田中角栄は一言でいえば情念の人だった。

『政治と情念』立花隆

情念。
そう聞くととても暖かいものを感じます。
でも、この情念の正体。
それは『個人的欲望(権力欲、物理よく、金銭欲、情欲)』。
忠義や憂国のような美しいものではない。
そう立花隆は述べています。

列島改造論。
昭和49年に国土庁が設立。
国土利用計画法も作られました。
それ以後、どんどん土地の値段が上がっていきます。
「地球の彫刻家」を自負する田中元総理。
土地にお金をかけ、土地の値段がどんどん上がっていきます。

その他にもまだまだ。
ゼネコンからの献金。
公共事業での口銭(売買手数料)。
インサイダー。
土地転がし。

今では明らかな違法行為も。
でも「後ろめたさもなく」やっちゃっていたそうです。

また、天下りも積極的に行いました。
色々な機関を作って官僚の就職先を斡旋。
官僚への態度もベタ甘です。

文字通り金にまみれた悪徳政治家。
完全な悪者ですね。

では、集めたお金はどうしていたのか。
着服……ではありません。
意外なことにばらまいたのです。

守銭奴ではなく徹底して人にカネを配ったんだから守銭奴ではない

『政治と情念』立花隆

田中元総理の秘書、早坂茂三さんの言葉。
もと勤め上げた方への擁護の言葉。
そんなふうにも感じます。

でも、それはある意味で正しそうです。
田中元総理のお金の配り方。
その根底には注目すべき考え方がありました。

「お前がこれから会う相手は、大半が善人だ。こういう連中が、いちばんつらい、切ない気持ちになるのは、他人から金を借りる時だ。それから、金を受け取る、もらうときだ。

……だから、この金は、心して渡せ。ほら、くれてやる。ポン。なんていう気持ちが、お前に露かけらほどもあれば、相手もすぐわかる。それでは百万の金を渡しても、一銭の値打ちもない。届けるお前が土下座しろ」

『駕籠に乗る人・担ぐ人』早坂茂三

僕はこの文章を読んでめちゃくちゃびっくりしました。
お金を受け取る人の心を読む。
まさに情念の人。
その田中元総理のあり方に感動すら覚えました。
届けるお前が土下座しろ
すごい含蓄のある言葉です。

また、田中元総理の天下り斡旋はどうでしょう。
田中元総理にとっては官僚は国政の要。
だから官僚にも心配りを忘れません。
総理就任時の最初のスピーチ内容はこんな感じだったそうです。

自分は無学な素人。
官僚諸君は専門家。
思う存分仕事をしてくれ。
思うことがあればなんでも言ってくれ。
失敗の責任は全部自分が取るから心配するな。

こんなことを言われたら官僚の皆さんだって喜びますよね
(天下りに関しては、また別の機会に触れたいと思います)。

田中元総理は全部お金を自分のものにしたのではありません。
稼いだお金はどんどんばらまいてしまったのです。
ちなみにばら撒き方は手渡し。
振り込み体制が整っていないのか信頼していないのか。
とにかく全部直接渡したそうです。

封筒に入れたり、紙袋に入れたり。
億単位の金を渡されて持ち運ぶのに肩が痛い。
そんなぼやきまであったそうです。
うらやましい……。

では、何故ばらまいたのでしょう。

「頂上を極めるためには、敵を減らす。自分に好意を持ってくれる広大な中間地帯を作り上げる。これがどうしても必要だ」

『駕籠に乗る人・担ぐ人』早坂茂三

選挙や政治で組織をうまく回す。
そのために味方を増やす。
お金を頭を下げながら渡して。

こうして、たくさんのお金が日本中に広まりました
結果、日本はどんどんと土地の値段が上がる。
土地が上がればお金が儲かる。
国はどんどん豊かに……。

あれ?
悪徳政治家が日本を豊かにしてる!

Σ(´・ω・)

そうです。
田中元総理のお金配りは日本を豊かにしたのでした。
当然ですよね。
お金をもらった方は使う。
値段の上がった土地は高く売れる。
田中元総理の行為は国を豊かにする効率的な方法だったのです。

ケインズには有名な言葉があります。

“不況で失業者が生じている時に、(政府が)何もしないでいるよりはお札を詰めた壺を廃坑に埋めるとかした方がまだましだという皮肉を言った”

すごい話です。
国が穴掘り穴埋めにお金をかける
それでも景気はよくなる。
そういうことを言っているわけですから。

ただ、ここで一つ、MMTの話も思い出します。
MMTでの税金はどんな意味合いだったでしょうか。
それは、”国家の財源ではなくお金を流通させるための仕組み”。
MMTでは税金は仕組みにすぎないのです。
穴掘りゲームでもいいからお金を国が国民に払う。
適当でもお金が国民に渡ればいいじゃん。

田中角栄元総理による国家繁栄の歴史。
ケインズ経済学。
MMT。
これら三つの様相は税金の意味の本質を捉えている気がします。

田中元総理のなさったこと。
土地転がしをする。
もうけたお金を渡して味方を増やす。
組織を強くし国を強くする。
これらは穴掘りゲームより有益なお金の使い方ではないでしょうか。

しかし、ロッキード事件が起きます。
これにより田中元総理は失脚。
政治生命を少しずつ失っていくこととなりました。
そして、この事件から国民の政治への考え方も変わります。

政治をもっとクリーンに。
癒着や天下りは断固反対。

その流れを受けてできたのが小泉内閣でした。
それまでの政治体制と大きな変化です。
立花隆は田中元総理以後を「ワイドショー化した」と述べています。
でも、それ以上に変わったのはクリーン化、透明化。
政治家は常にお金に潔癖であるべき。
税金は正しく使われるべき。
そんな考え方が広まったのです。

だから天下りの問題視が始まったのもこの頃のようです。

前回は「金儲け総理vs増税総理」という内容をまとめました。
どうして増税して総理は国民を苦しめるのか。
でも、なんてことはない。
クリーンでお金の使い方が真面目。
そんな政治家を国民が求めているから。

つまり増税総理を求めているのは国民自身。
こんな結論になってしまいました。

税金は大切に使うべき。
税金の無駄遣いは許さない。
この考え方は国を貧しくし、税金を上げることにつながってしまうのです。

税金がどんな使われ方をしても構わない。
だったら政治家が汚職しようが天下りしようが関係なし。

そう割り切れば豊かな生活を取り戻すことができるのです。

僕は豊かな生活である方がいいと信じています。
豊かな生活を送るためには社会が豊かでなくてはいけない。
社会が豊かであるためには、お金が世の中で回らなければならない。
そうするためには、税金がたくさん社会で使われる必要があります。

現代のおかねは金(ゴールド)がなくても準備できる。
法律で自制してあって、世界中に信頼された日本円。
もっと増えても大丈夫。
2023年現在は世界中の物が少なくなっての物価高。
景気が良いときの物価とは違う。
だから景気が良くなるときまで税金を上げる必要はない。

政治家や官僚の皆さんは国民生活の鑑(かがみ)です。
クリーン、ストイックを求めれば同じ生活を強要されます。
岸田総理の息子さんがお土産を買った。
それに石を投げつけない人だけが豊かな生活を得るのです。

参考にした本


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J.M.ケインズの経済学―貨幣経済の理論 (1954年) - – 古書, 1954/1/1

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫) Kindle版

政治と情念 権力・カネ・女 (文春文庫)

MMT現代貨幣理論入門 Kindle版