Venona ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動 ~国のスパイ組織の7人に1人が二重スパイというドジっ子な国~

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太平洋戦争はアメリカの圧倒的な勝利で終わりました。
広島への原爆投下。
日ソ中立条約を破棄したソ連が参戦。
そして長崎への原爆投下。
日本の完敗です。

圧倒的な物量で日本をねじ伏せたアメリカ。
“欲しがりません 勝つまでは”
のスローガンでギリギリに切り詰めても日本。
当然、勝ち目がありません。
悪の枢軸を討ち滅ぼす正義。
アメリカは第二次世界大戦を”よい戦争”と呼びました。
勝利に酔いしれ国民は大いに湧いたのです。

そんなアメリカという国は完全無欠な国家だったのでしょうか。
もちろん、そんな国家なんてありはしません。
今回はそんなアメリカのダメダメだった部分。
アメリカの裏側についてヴェノナから考えていきます。

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「ヴェノナ作戦」はアメリカ陸軍情報部に属していた「特別局」の責任者カーター・クラーク大佐が、もともと同盟国としてのソ連を信用していなかったために始まったものだった。

ヴェノナ ジョン・アール・ヘインズ & ハーヴェイ・クレア

ソ連にとって日本はどんな国だったのでしょうか。

どんどんと大陸に手を伸ばす日本。
その北側に位置するロシアとしては嫌な相手です。
数十年前には日露戦争で負けたこともある。
日本の同盟国であるドイツとも敵対中。
結果、ソ連はアメリカと手を結ぶことになりました。

アメリカとソ連。
大国が友好的な関係を結ぶ。
このこと自体は別に問題ありません。
ところがここでアメリカにとって思わぬ伏兵がいたのです。
ソ連からのスパイです。
“ヴェノナ”はその証拠となる文章類です。

スパイなんて存在、マンガの中でしかありえない。
僕はそう思っていました。でも、実際に存在していたのです。
ヴェノナ。
それは戦中戦後のソ連工作員の交信記録です。
その文章で明るみになるヤバい裏側。

例えばアメリカのスパイ養成所。
現CIAの前身、OSS。
その組織の中にソ連のスパイがいました。
それも1人や2人じゃありません。
7人に1人の割合でスパイ。
つまり7人に1人が二重スパイ。
当然アメリカの機密情報はダダ漏れ。
原子爆弾の技術もどんどん流出していました。

しかも、立場は末端の人ばかりではありません。
国の中枢を担う官僚レベルにまでスパイはいました。
大統領と直接会う高官まで及んでいます。

例えば日本史で勉強するハル・ノート。
当時の米国国務長官ハルの覚書です。
日本軍の中国および仏領インドシナからの全面撤兵要求。
蒋介石の中華民国国民政府以外の中国における政府、政権の否認を主張。
要するに一方的な要求の突きつけです。
これで日本もカチン。
日米戦争の開戦の原因ともされています。

この文章を作ったメンバーの1人。
ハリー・デクスター・ホワイト。
この人もソ連のスパイとされています。
日本を挑発する内容の文章をアメリカ政府内のスパイが作ったのです。

一度戦争して負けた国、日本。
第一次世界大戦時は力を温存している強国、アメリカ。
ソ連としては潰しあってくれたら嬉しいですよね。
そんな思惑があったことなど当然知らない日米両国。
その結果が当時の日本国民を追い詰める結果となったのです。

ヴェノナ作戦によって色々な証拠を掴むことができたアメリカ。
ところが……。
いざ捕まえようとしたら逃げられたり。
せっかく見つけた暗号キーをご丁寧にソ連に返却したり。
お粗末な話ばかり。
正直、FBIは逃げたスパイの先に潜伏していて捕まえる。
そんな優秀な組織だと思っていたのでガッカリしました……。

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ブレトン・ウッズ協定でのハリー・ホワイト(左)。ケインズ と(Wikipediaより)

ところで、ヴェノナの存在は微妙な立ち位置です。
まず、超法規的な存在のため裁判の役に立ちません。
証拠にはならないのです。
また、ヴェノナの存在自体も諜報活動によってソ連に伝わっています。
スパイ行為を知ることはできてもそれを表沙汰にできないのです。

一方で、もし暗号を把握していれば、諜報活動を知ることができます。
暗号解読に気づかれてしまうと別の暗号にされる恐れがあります。
面倒を省くためにも、ヴェノナの存在は知られたくありません。

そのことに矛盾するようですが、実は知られていもいいのです。
ヴェノナの存在自体が抑止力になる効果があります。
スパイ行動を知られているらしい。
その意識を持たされるだけでも諜報活動に支障が出てくるものです。

こうしてヴェノナは国家機密として隠匿されることになりました。
なんとなく存在は知られながら手出しできなかったヴェノナ。
それが年月の経過とソ連の崩壊によって明るみになった。
これがヴェノナ文章に関するお話です。

子供の頃、レッドパージの話を本や漫画などで目にしました。
その時、その壮絶さに驚いたものです。
また米ソの関係も不思議に思いました。
連合国として味方同士だった国々が冷戦と言われるまで仲違いしたのか。

もしかしたらその原因がスパイの存在だったのかもしれません。
レッドパージや冷戦は根深く絡む問題を解決する劇薬だった。
今ではそんな風に考えています。

日本はアメリカに戦争で負けました。
アメリカは本当に強い国です。
ところがそのアメリカも他国に操られていた事実がありました。
アメリカは人種のるつぼ。
たくさんの人々が集まってできる強さがあります。
抗体をたくさん持って強い体ができるように。

ヴェノナは逆に、その弱点を示しました。
生物が病気にかかる。
その過程と同様に、異質を取り込むことは危険を孕むのです。

今回は、ヴェノナの存在から強いアメリカの弱い部分を読み取りました。
経済の観点から、アメリカとの関係を思い返してみます。

日本はアメリカに戦争で負ける。
その後、日本は復興。経済的に豊かになる。
アメリカは貿易摩擦を問題として日本を攻める。
その要請に従った結果、日本はバブルから崩壊へ。
アメリカは友好国と言われています。
でも、歴史的にはあまりに友好的な行動はしていません。

だからといって、アメリカと敵対するべきだとも思いません。
平和を最善とする
……という考え方は僕個人的に好きではありませんが。

ただ、ここで最低でも一つ言えることがあります。
戦争をする背景を同時代の人間は知ることができないのです。
時間の経過や国の崩壊でしか明るみに出ないものなのです。
ちょうど、ヴェノナのように。

他人の都合の良いように動かされたい。
そればらヴェノナなんて無視してもいい。
何も知らずに日銭を稼いで流されながら生きた方がいい。
でも、そうすると戦争が起きるのです。

ところで、今も争い事が起きています。
本当にそれを止めたければ、武器なんて作っちゃダメですよね。
でも武器をたくさん作ってばらまいてる国があります。
ある本によると、軍事兵器は経済をよくする最善のものだそうです。
それにスパイって、まだ当然いるんですよね。
当然、国を動かす中心にだっている恐れがあります。
争い事は、一体誰がやりたくてやってるんでしょう。

僕は日銭を稼ぎつつ、本を読んでいたいです。
多少は人の思惑通りに動いてもいいと思っています。
でも、面倒なことに巻き込まれたくはありません。
本を読んでダラダラする暇があるから平和が好きです。
スパイの話は漫画で読んでる方が好きです。

ちなみにヴェノナは原文を読むことが今でも可能です。
検索すれば上位に表示されます。
なんか怖いので、リンクを貼るのは控えますが……。

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日本経済を考えていたら、アメリカのスパイにまで話が飛びました。
次回はこれまでの考えをまとめます。
日本経済衰退の背景を自分なりに考察したいと思います。

趣味で読書している人間が語る日本経済衰退の背景。
こんな内容を読んでくださる方がいることを信じて……。